コミック版 陰陽師 [安倍晴明と私]
今回はコミック版「陰陽師」の話です。
昨年の12月から、お正月休みにかけて、コミック版「陰陽師」を読みました。
マンガという事で、すぐに読んでしまうつもりでいましたが、
内容に凄くボリュームがあり、時間をかけて読ませて頂きました。
夢枕獏氏原作の小説「陰陽師」の漫画化という事で、小説で1度読んでるからなと
余り興味を持っていませんでしたが、コミックを読み始めると、
夢枕先生の「陰陽師」とは、また違ったすばらしい世界観がありました。
コミック版の安倍晴明。美形でハンサムでした。
平安時代の町並み、建物、風景、文化、衣装、音楽、仕事、恋愛、趣味、行事、
その他、平安の生活が絵と言葉を通して読んでいる私にとてもリアルに
伝わってきました。小説では伝わらない事がマンガでは伝わってきました。
岡野玲子先生、平安時代の事を凄く勉強しているのですね。
陰陽道の知識も大分勉強させて頂きました。
五行、木・火・土・金・水の配当を現在勉強中の私ですが、コミックの中では、
安倍晴明と源博雅の会話の中に、陰陽道の考え方、解説が様々な形で
行われており、とてもありがたい事です。
夢枕先生は、はじめ「陰陽師」の漫画化に反対だったらしく、岡野玲子先生の
漫画化ならとOKを出したそうです。岡野先生の晴明さんいい男ですね。
始めのうちは、原作は小説のとおりとなっていましたが、7巻か8巻ぐらいから
原作を離れ、岡野先生独自の安倍晴明が描かれていきます。
陰陽道の成り立ちから、平安時代の歌合わせ会、楽(音楽)の話、雨乞いの話、
コミック版独自のキャラクターも登場します。
晴明の家に真葛という可愛い娘が居候して、晴明と博雅、晴明の式神たちや、
怨霊の菅原道真や祐姫と絡んでいきます。
この真葛ちゃんがまた可愛い、そして面白い。
真葛ちゃんです。その後、晴明さんの奥さんになるそうです。
ただ、漫画では安倍晴明のキャラクターが神秘化されていて、シリアスすぎるというか、女性の視点から、ミステリアスな魅力が求められているということでしょうか。 私としては夢枕獏先生の描く、危なげない、風雲気ままな、安倍晴明のキャラクターが好きかもです。
コミック版「陰陽師」は宝島社から、解説本が出ていて、夢枕獏先生、
映画「陰陽師」の安倍晴明役の野村万斎さん、源博雅役の伊藤英明さんの
インタビューがあったり、コミック版陰陽師の登場人物紹介や、陰陽師、安倍晴明、
平安時代の建築物や生活、史跡の解説 etc・・・
豊富な知識を勉強させて貰いました。
もっと知りたい!陰陽師―コミック陰陽師「安倍晴明」の全てがわかる!
- 作者:
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2001/10
- メディア: 単行本
NHKドラマ陰陽師 [安倍晴明と私]
今回は、NHKのDモードドラマシリーズで放送されたドラマ陰陽師の話です。
安倍晴明、源博雅、蜜虫。
まず、最初に私はNHKが大好きな事を断っておきます。
NHKはとても好きな会社で、今教育テレビの方で、「とっさの中国語」「ハートで感じる英文法」「イタリア語会話」、語学の勉強でとてもお世話になっています。
NHK テレビイタリア語会話 2008年 01月号 [雑誌]
- 作者:
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2007/12/18
- メディア: 雑誌
また、私の仕事でNHKから取材を受けた時の対応もとても印象が良かったです。
放送後、放送に使った映像をDVDに焼いて、記念品と一緒にわざわざ送ってくれるような会社です。
そんなNHKが陰陽師のドラマを作っていた事は知っていましたが、再放送は予定なしと聞いていましたが、DVDが出ていた事は最近になって知り、早速、アマゾンで購入しました。
陰陽師 1~5
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2002/04/24
- メディア: DVD
NHKのDモードドラマシリーズで放送されたドラマ「陰陽師」のDVDという事で、全十話でありました。
映画「陰陽師」を観ていたので、NHKドラマ「陰陽師」には余り期待は有りませんでしたが、はっきり言って、良かったです。とても感動させられました。
一話を観た段階では、安倍晴明役の稲垣吾郎が、晴明のキャラクターになじまないと不満に思いましたが、回を追う毎に、クールファイスとホットなハートを持つ晴明のキャラクターに馴染んできて、こんな晴明も有りかなと思ってきました。
役者としての稲垣吾郎は、フジテレビドラマ「ブスの瞳に恋してる」以降好きですが、晴明役となると話は別ですが、映画「陰陽師」の安倍晴明役の野村万斎は別格として、晴明役のゴローちゃん好きでした。
ブス恋の時の稲垣吾郎。
源博雅役は杉本哲太。彼は無骨な博雅役にピッタリで、映画「陰陽師」の伊藤英明とどっちが好きかと言うと、杉本哲太かな?好演でした。
蜜虫役は、本上まなみ。本上まなみの演じる蜜虫とても好きでした。惚れた・・そんな感じです。晴明に思いを寄せ、立場上一線を越えられない式神としての蜜虫。女性のいじらしさが良く表現されていたと思います。晴明、博雅、2人との絡みも安心感と色気を与えてくれ、良かったと思います。
同じ夢枕先生の原作でしたが、映画「陰陽師」とは違い、NHKドラマの「陰陽師」は平安時代の暮らしや、登場人物の心情面にも気を配り、人間ドラマとして、とても良い仕上がりになっていたと思います。
平安時代の貴族と庶民の暮らしぶりや、男女の関係、服装、インテリア等、映像を通して平安時代に触れられた事が良かったと思います。
私は平安時代がとても懐かしいのです。映画「陰陽師」でもそうでしたが、ドラマ視聴中涙が止まらない事が何回もありました。さりげない優しさを秘めた、安倍晴明にとてもDearな感情が湧きあがってきます。
朝廷や貴族、そして鬼を相手に、風雲気ままに、さらりと凄い事をやってみせる安倍晴明。でも、言葉一つ一つに奥が深い。やはり、野村万斎の晴明の方がピッタリくるけど、ゴローちゃん悪くなかったですよ。晴明さんの人情味にも触れられました。
映画「陰陽師」では、晴明のライバル、民間陰陽師、芦屋道満は出てきませんでしたが、NHK「陰陽師」では、よきライバルとして登場しました。寺尾聡が好演して、とても良かった。
芦屋道満役の寺尾聡。
NHKDモードドラマシリーズという事で、とてもオシャレなドラマになっていましたが、バックミュージックがとても良かった。
ミュージックはH.Garden。日本のシケインと評されるユニットという事ですが、トランス系の音楽で、NHKの「法隆寺」や「ピラミッド」の音楽を担当していたそうです。
最後に、H.GardenのNHKドラマ「陰陽師」サウンドトラックCDを紹介します。
NHKドラマDモード : 陰陽師 ― オリジナル・サウンドトラック
- アーティスト: H.GARDEN
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2001/05/16
- メディア: CD
とても良いです。疲れたときの癒しのミュージックとしてもいいし、勉強の時のBGMにしたいです。
いいですよ。
安倍晴明について [安倍晴明と私]
みなさんこんにちは。
お待たせしました。今回は安倍晴明のお話です。
野村万斎が演じる安倍晴明
安倍晴明は皆さんもご存知の通り、平安時代の天皇に仕えた宮廷陰陽師です。
天武天皇が飛鳥時代設置した陰陽寮に所属していました。
京都、陰陽寮跡
安倍晴明は日本の陰陽道を大成した人でもあると言われています。
陰陽寮では実力のある陰陽師から、陰陽頭、陰陽博士、天文博士、暦博士、漏刻博士が選ばれ、晴明は天文博士でした。星を見て、天の兆しを読み、占いを行い、物事の吉凶を調べていたと推測されます。
晴明は陰陽師・・・陰陽道、陰陽五行説から世の中を見ていたに違いありません。私は陰陽五行説がとても好きです。宇宙を含む全てのものは陰と陽を含み、五行、木・火・土・金・水の5つのエレメントのいずれかに配当され、この陰陽五行説から晴明は世の中をみていた事と思われます。現在私は五行の配当について勉強中です。五行には五行相生、五行相剋、比和という関係が成り立っています。五行相生、五行相剋については、中国道教の陰陽五行思想(インヨウゴギョウシソウ)から来ています。
陰陽五行思想が日本に伝わり、日本の古神道と密教などの呪術的要素を取り入れ、日本の陰陽道(オンミョウドウ)は生まれました。陰陽は中国読みはインヨウですが、日本ではオンミョウと詠みます。陰陽道は起源は中国にありますが、日本独自の当時最新のテクノロジーでした。晴明はその陰陽道を身に付け、大成した平安時代の陰陽師という事です。
一般人の目には見えない式神を使役し、陰陽道の呪術を使いこなし、星から世の中の先を読み、占術に長け、呪詛を祓い、死んだ人を生き返らせるといわれる泰山府君祭等各種儀式をとり行い、平安時代、怨霊や鬼に怯える人々を数多く救っていたと伝えられています。
故に安倍晴明は天才陰陽師として人々の心の中に生き続け、死後多くの物語や歴史書やさまざまな伝承で語り継がれ、千年以上経った今も彼の魅力に惹かれる人々が多く、人気が絶えません。
晴明の死後すぐ時の一条天皇が晴明を神として祀れと命令し、京都晴明神社はできました。私は晴明神社が大好きです。
晴明の凄いところは、ものすごいレベルの陰陽の術をさらりとやってしまう事だと思います。クールなスタンスでさらりと陰陽の術を使う。本当の意味で陰陽道に精通していまないと到底出来るわけがなく、彼は陰陽五行説自体を体で覚えていたに違いありません。
頭の中では緻密な計算をしながら、表面上はクールなスタンス・・・とても惹かれます。
晴明は凄く感じやすい体質ではなかったかと思います。とても感じやすいから、式神も鬼も見えたし、世の中の変化の兆しも分かった・・・私はそう思います。
晴明が唯一残した「占事略決」は当時陰陽師が用いた占術、六壬神課のテキストです。晴明が50代後半の頃書いたとされていますが、天文博士として天文のエキスパートとして活躍した自分の専門分野の話ではなく、何故、占術の本を書いたのか興味深いところでもあります。
私なりの、安倍晴明の解説いかがだったでしょうか?
安倍晴明の子孫は土御門家を名乗り、晴明の死後、日本の陰陽道の第一線を継承していきますが、現在も残る「土御門神道」についても、今後私は調べていきたいと思います。
福井県おおい町(旧名田庄村)土御門神道本庁
安倍晴明・讃岐出生説 [安倍晴明と私]
皆さんこんにちは。
今年2008年7月19日四国讃岐に、安倍晴明讃岐出生説を調べに行って来ました。
今回は安倍晴明の讃岐出生説の話です。
平安時代、安倍晴明が京都で活躍する前、安倍晴明自ら神主をしていたとされる讃岐香南町の冠纓神社です。
冠纓神社の宮司さんにお話を伺ったところ、この神社の神主をしていた頃から、安倍晴明は人並みはずれた超能力を持ち、当時の天皇に引き抜かれて京都へ行って京都で活躍したとの話でした。
讃岐・冠纓神社の神前です。
冠纓神社の境内には平安当時、安倍晴明が祀っていたという祭神が祀られており・・安倍晴明神社との碑もありました。祀ってある石には3つの神様の名前が刻まれており、金神の名前もありました。
安倍晴明の出生地は、①大阪説②茨城説③讃岐説が有名で、今回調べに行ったのは、③讃岐説です。
讃岐説は歴史書の公文書の中・・「讃岐国大日記」と丸亀藩の公選地誌「西讃府志」に記録が残っています。
大日本史料「讃岐国大日記」によれば、安倍晴明は讃岐国香東郡井原庄、また丸亀藩の公選地誌「西讃府志」によれば讃岐国香川郡由佐がその生まれだとされています。
どちらも、現在の香川県高松市香南町、香川町の辺りです。
高松市香南歴史民俗郷土館です。由佐城跡に建てられた公立の博物館ですが、安倍晴明まつわる話を学芸員の方にいっぱい教えて貰えました。写真右下の由佐城跡の石碑の文字見えますか?
香南歴史民俗郷土館の解説板
由佐城は安倍晴明の練石を城内に収め、その石を祀って災難を防いだとあります。
その2つの練石は現在は、由佐城跡地から50mくらい離れた城主のお墓の横に祀られていました。祠の中にはその丸い石が祀られていました。
その後、香南歴史民俗郷土館の学芸員に教えて貰った安倍晴明にまつわる史跡を廻って見る事にしました。
香南町の真言宗お寺、天福寺です。奈良時代に行基さんが建立し、その後空海さんが真言宗お寺に変更したそうです。
このお寺に安倍晴明が平安時代に所属していた事をお寺の方から聞きました。
密教を安倍晴明が修行・・
またこの真言宗のお寺には、安倍晴明が念を入れたとされる石が祀られており、安倍晴明ブームの頃はよく人が訪れたそうです。
この祠は地元では「アベヨシサン」言い伝えられているという事でした。
次に、安倍晴明が住んでいたと聞いた場所に行ってみました。
高松市香川町の安倍晴明の屋敷跡一角は現在、住吉神社となっていました。
私はこの小さな神社の敷地一帯に安倍晴明のパワーを感じました。
皆さんはこの讃岐説・・どういう感想を持たれますか?
また、讃岐には弘法大師空海の出生地の善通寺にも寄って来ました。この善通寺の門前を安倍晴明が通った時、晴明の式神が空海を恐れて姿をくらましたエピソードも残っています。
最後に讃岐の由佐・・安倍晴明の出身地の風景写真を載せます。
遠くに、円すい状のきれいな山がたくさんある讃岐の町でした。
なお、この讃岐の調査にとても参考にさせて頂いたホームページです・・・
ありがとうございました。
小説「陰陽師」① [安倍晴明と私]
皆さんこんにちは。
今回はこのブログもお蔭様で30記事目という事で、私の大好きな夢枕獏先生の小説「陰陽師」の話にしました。小説「陰陽師」は何回かに分けて書きたいと思うので、今回は初巻の話です。
私は小説「陰陽師」の晴明像が大好きです。安倍晴明は夢枕先生の小説から入った訳ではありませんが、私の安倍晴明に対するファーストインプレッションとほとんど一致しています。
奇妙な男の話をする。 たとえて言うなら、風に漂いながら、夜の虚空に浮く雲のような男の話だ。 闇に浮いた雲は、一瞬も一瞬後も、どれほどかたちを変えたようにも見えないが、見つめていれば、いつの間にかその姿を変えている。同じ雲であるはずなのに、その在様の捕らえどころがない。そんな男の話だ。 名は、安倍晴明。 陰陽師である。
小説「陰陽師」の冒頭であります。ここから安倍晴明の小説は始まります。
今回はこの初巻「陰陽師」についてのお話です。
安倍晴明・・星を見て、陰陽五行の理から世の中の森羅万象を読み解き、占術に長け、式神を使役し、呪術を以って、平安の鬼や物の怪など闇の恐怖から人々を救った陰陽師。その陰陽の術が他の陰陽師と比べてもすごかったので、「晴明は陰陽の達者なり」と言われたそうです。
また、陰陽の達者でありながら、容姿端麗、スマートでクールなスタンスを保ちながら、少しひねくれた人物像にも人々は気を惹きつけられるのではないでしょうか。晴明さんは少しひねくれていたにもかかわらず、さりげなく天才的な陰陽の術で平安の人々を闇の魔から救ったからこそ、約千年後の今日でもその魅力を熱く語り続けられているのだと私は思います。
映画「陰陽師」の安倍晴明
初巻は安倍晴明と源博雅の会話シーンが多いです。荒れ庭の晴明邸で、酒を飲みながらの会話が多いですが、特に晴明が博雅に呪(シュ)について、実直な博雅を煙にまくかのような晴明と博雅のやり取りがとても好きです。
博雅「俺をからかっているのか?」
晴明「からかっていると言えばからかっている、からかっていないと言えばからかっていない。」「呪とはそういうものだよ。」
こんな感じで、延々と話は続きます。二人の会話はとても面白い。
次々起こる都の怪異を情熱家で実直な博雅が持ちかけ、素直さが少しひねくれているかのような晴明が、クールなスタンスでこの会話のテンポで冗談交じりに陰陽の理で解明していく。
都の事件、怪異はこのふたりの会話の中で解決に向かいます。このふたりの会話に夢枕先生のすてきなセンスが感じられます。私はとてもお洒落だと思います。
歴史書には、安倍晴明と源博雅の関係は出てこず、夢枕先生のアレンジとの事です。
晴明と博雅(映画陰陽師)
初巻は「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」「梔子の女」「黒川主」「蟇」「鬼のみちゆき」「白比丘尼」の6編で、「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」「鬼のみちゆき」はNHKDモードドラマ「陰陽師」でドラマ化されており、またコミック版「陰陽師」では6編とも漫画化されています。また「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」の中で晴明が式神を使って蝦蟆を殺してくれるように試されたシーンもアレンジされていますが、映画「陰陽師」で出てきます。
NHKDモードドラマ陰陽師「玄象」、漢多太と玉草と晴明
陰陽師初巻で、私のお気に入りというか凄く惹かれる話は「蟇」です。応天門のあやかしを調べるため晴明と博雅は牛車に乗り、晴明の式の先導のもと、博雅が幽冥界と言っていましたが、この世から別の次元の世界へ牛車を走らせます。晴明が「方違えに似た事」と言う方法を何度も繰り返しながら・・己酉(つちのととり)から五日目・・天一神が方向を移る日にあたる・・その通り道を五度横切りながら・・そのうち誰ぞ見に来るかも知れぬと晴明は博雅に言います・・
「人ではない」「おそらく土(つち)の弟(と)だから土精(どせい)であろうな」晴明は続けます。「俺の姿は見えぬ、博雅は見えような」「俺の言う通りにとすればよい」・・ 「おそらく、博雅にこう訊くであろうよ。人である身が何故かような場所にいるのか」 「そう訊かれたら、こう答えればいい」「実は、先日来わたくしは辛気を病んでおりまして、よく効く薬はないかと知人にたずねておりましたところ、本日、辛気の虫に良く効くという薬草を知人からいいただきました。それが、ハシリドコロという草を干したもので、それを煎じて、これほどの碗に三杯ほどいただきました。その後は何やら心がどうにかなってしまったようで、ここでぼうっとしております・・そう答えるのだぞ」 「何を言われても、今の同じ事を繰り返すだけでよい」晴明が「言われた通りだぞ」と言ううちに白髪の老人の顔が牛車を覗く・・ 老人は土の精・・博雅に訊く「人である身が何故かような場所にいるのか」晴明の言った通りである。 博雅は晴明の言った事のまま伝えると、土精の老人は「ハシリドコロをな」「それで魂がかようなところで遊んでおるのか」 「ところで、お前天一神の通り道を今日五度ほど横切った者がおるのだが、よもやお前であるまいな」老人が睨みをきかせる。晴明と博雅の事であるが、博雅は「ハシリドコロをいただいてから、心がぼうっとなっており、なにがなにやら分かりません・・」と言った。
「ふうん」老人は唇を尖らせふっと土臭い息を吹きかけた。「ほう、これで飛ばぬのか・・」「良かったな三杯で。四杯飲んだら戻れぬところじゃ。わが息で飛ばぬのなら、いずれ一刻もすれば、魂はもどれようぞ」と言って老人の姿は消えた・・
とても幻想的に描かれている幽冥界入ってきて、このあたりのそれぞれのやり取り・・とても惹かれます。この世でもないあの世でもない妖しげな不思議な世界・・岡野玲子先生のコミック版陰陽師で見ると、とても面白いんです。土精のなまず髭の老人がとてもいい味出してくれています。
コミック版陰陽師の土精の老人
小説とコミックを読み比べていくと・・この妖しげな世界に引き込まれるような気持ちなります。現実とは異なる、ある意味すごく贅沢なお洒落な世界だと思います。
夢枕先生にしても岡野先生にしても、陰陽の話をよく研究されていると思います。夢枕先生は作家の方が集まった座談会の中で「私は勉強不足です」という発言を何回か目にしましたが、私はこの言葉に励まされます。俺も勉強しようという気にさせられます・・
小説「陰陽師」、夢枕獏先生はまだまだ描き続けるらしいです。「今昔物語」などにはまだまだ、陰陽師のエピソードがいくらでもあるそうです。私も「今昔物語」・・古典で陰陽師の話を読んでみようと思います。
今回は小説「陰陽師」初巻のエピソードでしたが、夢枕先生の小説「陰陽師」まだまだ描かれているので、また1冊づつでもゆっくりお話させてください。
今回、文章が少し長くなりました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
晴明と博雅・・いいですね・・・